1.法務部員は評論家ではない
多くの経営者が、法務部員を採用する際に、評論家は要らないといいます。法務部員には法的な判断力が求められますが、ポリスやジャッジではありません。法的な判断力を前提に、理想はどのようにすれば解決できるかの提案、そうでなくとも具体的なリスクの抽出と評価までが法務部員の仕事です。法務部員は評論家ではありません。
2.駆け引きも法務の仕事
法務部員は実務家です。法務部員の仕事の大部分を占める契約書の作成・添削には相手方が存在しています。
相手方が存在するということは、駆け引きが発生するということです。損害賠償に上限を設けるかどうか、専属的合意管轄裁判所をどこにするか、などは、相手方と利害が対立するところなので、勤務先の利益を損なわない範囲で妥協が必要になります。取引の内容について駆け引きが発生することも当然です。法務が直接駆け引きをすることは稀ですが、事業部門に対して、このように交渉してはどうかと提案することも可能です。
法務部員の仕事は評論家どころかネゴシエーターの要素が強いものです。
3.相手が受け入れられる提案をする
法務部員は勤務先の利益を第一に考えるべきなのですが、絵に描いた餅は食べられません。食べられる餅、実現できる利益を追求する必要があります。
そのためには、相手方にとってのメリット、デメリットを想像しながら提案をして、妥協することも大切です。
自分が相手方ならばこの提案を受け入れられるかどうか、ということも、提案を考える際の判断基準の一つとなります。
4.時には相手が嫌がることも
法務部員の重要な仕事の中に、トラブルの解決があります。クレーマーに粘着されているとき、従業員ともめてしまったとき、解決や軟着陸を狙うことも、勤務先のガーディアンでもある法務部員の仕事です。
契約交渉における理想の落着は共存共栄です。一方だけが利益を得るならば、相手方は関係の継続を求めないからです。
しかし、トラブルの解決における理想の落着は完封勝利です。そのためには、相手が嫌がることをする必要があります。
相手が嫌がることといっても、嫌がらせは悪手です。嫌がらせを受けたという攻撃材料を与えてしまうからです。
極度に実務的な内容であるため多くをお伝えできないことが残念なのですが、時として、相手の要求を丸のみすることが、相手が最も嫌がることとなる場合があります。相手の要求を丸のみしてしまえば、相手には手札が残らないからです。
敵対的な交渉においては、初手で、自分にとっても相手方にとっても益の無い、しかし正当な要求がなされることがよく行われます。自分だけでなく相手にも益がないので拒まれることが前提の要求です。正当な要求が拒まれた、という事実が、より大きな成果を引き出すための武器になるからです。
そんなときは、「わかりました、正当な要求だから受け入れます。交渉終わり」とすることが一番困ります。具体例は明かせないのですが、特に労働案件において効果的な交渉術です。
5.情報戦、心理戦も法務の仕事
相手の立場になって考えるためには、相手の情報が必要です。事業部門と連携しながら、相手方の懐具合を探ることも法務部員の力量です。
交渉事は人対人で行われます。やはり事業部門と連携しながら、相手方の社風や担当者およびその上司の性格をプロファイリングし、相手が喜んだり嫌がったりするだろう提案ができることも法務部員の力量です。
法務部員にはコミュニケーション能力が求められており、相手の立場になって考えることはコミュニケーションの基本です。相手の立場になって考えることができれば、情報戦や心理戦も戦い抜けます。