1.法務部員の仕事はブラックボックス
六法は、辞書と異なり、日本語が読めるからと言って誰でも読み解けるようには書かれておらず、使いこなすには特殊な訓練が必要です。法務部員はその訓練を受けていますが、法務部員以外は受けていないので、法務部員以外から見た法務部員の仕事はブラックボックスに見えます。これはとても怖いことです。
確かな実力を備えた先輩法務部員に恵まれていれば、その指導と評価を受けることで、法務部員として成長することができます。しかし、法務部員は絶対数が少なく、法務部が存在しないか一人法務の企業が大多数です。今は立派な法務部が存在している企業も、未経験の一人法務から始まっている場合が大半です。ベテラン法務部員が、誰からも指導を受けることなく歳月を重ねた結果、法務部員歴何十年の自分こそが正しいという妄想に囚われてしまうことが多々あります。おかしなことをしていても、社内の誰も指摘してくれません。優秀な部下がいても、ベテランには逆らえません。逆に、ベテランのおかしなやり方に染められてしまいます。これがブラックボックスの怖さです。
ブラックボックスの中で独り善がりにならないためには、法令等の確たる根拠を常に探る姿勢が必要です。
2.法務部員はサラリーマン
法務部員は企業に所属するサラリーマンです。企業の一員として、企業の目的にコミットすることが求められます。与えられた役割にコミットした先に、企業が何を目的としているのかを見据えていなければ、空回りしてしまいます。
空回りの典型例が契約書の添削です。相手方ひな形を修正すれば相手方法務とのキャッチボールが始まるので、契約締結までに時間がかかり、事業部門の動きが止まります。その損失を織り込んでも、なお修正しなければリスクが残ると判断して修正するならば良いのですが、一見して誤字だとわかる誤字を発見して、鬼の首を取ったように契約書を差し戻す法務部員がいます。企業の目的は利益の追求であり、これは明らかに企業の目的に反する行為です。そんな法務部員は不要ではなく有害です。
3.法務部員のスタンダードを身につける
法務部員の仕事は多岐にわたります。広大な業務領域の中で、何から手をつければよいかわからない場面にも日常的に遭遇します。
そんなときに、迷子にならずに、着実に前に進んでいくためには、スタンダードを身につける必要があります。法務部員の仕事はブラックボックスだ、だから法令などの明確な根拠を出発点としなければ独り善がりになってしまう、法務部員はサラリーマンだ、だから勤務先の利益を損ねるような契約書の修正はしてはならない、そのような、法務部員としての「べき論」の積み重ねがスタンダードになります。
法律を学ぶには法概念から学ぶことが効率的であるように、法務部員としての技術を伸ばすにはスタンダードを身につけることが近道です。
だからここでは、法務部員としての「べき論」を教えます。