法律議論に興じない

1.法律議論に正解はない 

法律議論とは、多義的に解釈し得る文言をどう読むかという問題です。どのように読めるならば、それは正解です。そのようにも読めるならばそれも正解です。複数の正解があります。司法試験では法律議論が問われますが、自分なりの正解に至る道筋に矛盾がなくかつ説得的であれば合格点がつきます。どの説だけが正解ということは決してありません。司法試験でも法務部員の現場でも、問われるのは知識ではなく論理的思考に基づいた説得力です。

2.訴訟になれば 

訴訟になると、勝ち負けを決するために、正解が複数ある中で、その中の一つを選ぶことを強いられます。法律の目的や当事者の利害関係、社会への影響などを踏まえて、どの正解が一番座りが良いのかが争われます。ここにおいてなされるのは価値観の対立であり説得合戦です。だからこそ、原審、控訴審、上告審で選ばれる正解が異なることが多々あります。 

3.法律議論は楽しい 

法律議論には正解がなく、本質は価値観の対立に端を発した説得合戦であるため、非常に盛り上がります。法務部員を目指す者は議論好きが多いので、これを楽しいと感じると思います。そのため、この法律はどのように読むはずだなどと盛り上がってしまう法務部員をよく見かけます。

4.自分の仕事は何であるかを考える

法務部員はサラリーマンです。勤務先に利益をもたらすことが仕事です。法務部員は、営業職のように売上を作ることができないので、営業職が安心できるような契約書を作ったり、訴訟リスクを回避したりすることを通じて会社に貢献します。 

法務部員が法律議論を学ぶのは、議論をするためではなく、議論を避けるためです。どこで議論が発生するのか、議論の帰結によって実務的にどのような影響が生じるのか、がわからなければ、効果的な防止はできません。 

いざ議論になれば、決着をつける手段は訴訟しかなく、訴訟は勤務先にとって負担となります。この法令の文言は多義的な解釈ができると考えれば、議論を始めるのではなく、契約書で議論が発生しないように合意すれば良いのです。法務部員と弁護士は求められる能力は似ているのですが、仕事内容は大きく異なります。 

弁護士は用心棒であり、争いごとになれば、先生お願いしますと言われて登場します。映画ならば盛り上がるシーンですが、現実は平和が一番です。弁護士の出番がない平和な世界を作ることが法務部員の仕事であり、法律議論に興じないことはその入り口です。