コールセンター業務を外注する場合の注意点

1.契約の構造を把握する

コールセンター業務では、顧客からの問い合わせ対応を行います。問い合わせてきた顧客の個人情報を取り扱うということです。 

また、スタッフが問い合わせに答える際に、社外秘の技術情報に触れることもあるかも知れません。 

さらに、コールセンターは、賃料や人件費を抑えるために、遠隔地に所在する場合があります。 

委託する作業の工数も読みづらいです。問い合わせが集中すれば回線がパンクして顧客の不満を招き、回線を余らせると固定支出が増えます。 

2.個人情報と秘密情報

契約書を添削する際には、勤務先は情報を出す側か受け取る側か、どのような情報を出すのか、それが漏洩した場合の被害、を考える必要があります。 

コールセンター業務を外注する場合は、情報を出す側です。問い合わせてきた方の個人情報を取得し、または、顧客番号などをヒアリングして、自社の顧客データベースと照合するなどが想定されます。これは、個人情報保護法上の委託に該当します。

個人情報保護法 

(委託先の監督) 
第二十五条 個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。 

コールセンターのスタッフが情報漏洩をしてしまうことを防ぐために、契約書上で、個人情報管理体制の構築を求めることが必要です。これは個人情報保護法上の受託者監督義務の履践でもあります。 

顧客からの問い合わせへの対応にために技術情報等の秘密情報を提供することが想定されますが、これがきちんと保護されるよう守秘義務条項を定めることも必要です。

秘密情報は秘密と明示した書面で開示すること、口頭で開示した場合には何日以内に書面で追完すること 

守秘義務条項では、このような条件が定められることが多いのですが、情報を出す側ならば愚の骨頂です。せめて「書面または電磁的方法」です。現代社会では電子メールで情報を開示することが多いからです。情報を出す側ならば、出した情報が余さず保護されるように契約書の文言を工夫することは当然なのですが、どこかから拾ってきた秘密保持条項をコピペするだけの法務部員が数多くいます。 

開示された一切の情報を秘密情報とする 

情報を出す側から、できるだけ広く秘密情報にしようと、このような表現をすることも悪手です。漠然不明確な定めはかえって実効性を損ねます。個々の情報が秘密情報にあたるのか、後に争いとなります。

Aという情報、Bという情報、Cという情報、Dという情報、その他一切の情報を秘密情報とする

このように、契約において開示が想定される秘密情報を例示列挙して、最後にその他一切のとすることで、少なくともABCDの情報は守れます。 

守秘義務条項は法務の腕の見せどころです。

2.遠隔地にある場合

受託者となるコールセンターが遠隔地にある場合、裁判管轄が重要になります。裁判管轄の基本をおさらいします。

民事訴訟法 

(普通裁判籍による管轄) 
第四条 訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。 

(財産権上の訴え等についての管轄) 
第五条 次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。 
一 財産権上の訴え 義務履行地 

民法 

(弁済の場所及び時間) 

第四百八十四条 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。

細かなルールがありますが、被告所在地と義務履行地、持参債務の原則で多くをカバーできます。例えば、委託者が報酬を支払わない場合には、委託者の住所地に加えて、義務履行地である原告の住所地でも裁判を起こせることになります。 

しかし、受託者が業務において問題を起こし、委託者から受託者を訴える場合には、原則として、被告の住所地で裁判を起こすことになります。コールセンターが遠隔地にある場合、これでは不都合です。そのため、委託者からアクセスが良い場所に合意管轄を定める必要性が高いと判断すべきことになります。

3.契約内容の流動性

コールセンター業務は需要が読みづらいです。コールセンターの外注と言っても規模は様々で、個人事業主がその電話番号にかかってきた問い合わせを転送することもありますし、複数の回線を用意してもらうこともあります。出来高で契約をする場合、回線のパンクは顧客満足度を下げますし、全て対応できてしまうと想定していなかった高額な費用となる可能性があります。そのため、契約内容を柔軟に見直せるように工夫する必要があります。コールセンター側の対応能力も絡んでくる交渉事項であるため、正解は一つではないのですが、法務部員と事業部門との協業が求められる場面です。 

4.契約書を離れても

コールセンターを外注する場合、きちんと情報を守れる管理体制が整っている外注先を選定することや、コールセンターとの情報連携体制の構築も重要となります。また、法務部員もトークスクリプトの作成に関与することがあります。さらに、クレームの内容によっては法務部までエスカレートしてくることもあります。法務の仕事は契約書という紙の上だけでは終わりません