1.法務部員に与えられた道標
法務部員には、絶対に正しいと言い切れる道標が与えられています。それが法律です。裁判所を含めた官公庁の見解も道標になります。これらは、絶対に正しいとまでは言い切れないものの、実務的には従っていれば大怪我はしません。法務部員は、法律と官公庁の見解を道標にしなければ、迷子になった果てに独善的になってしまいます。
2.弁護士の解説は参考にならない
ところが、法令や官公庁の見解を道標としていない法務部員が大多数です。社内で法律相談を受ければ、インターネット上でどこかの弁護士の解説を見つけてきて、それが正しいと信じてしまいます。
日々法改正がなされていますが、インターネットに転がっている解説はどの時点の法律を前提としているのでしょうか。その解説が書かれた後に、実務的インパクトが大きな裁判例は出ていないでしょうか。弁護士にも得手不得手がありますが、その弁護士はその解説分野にどの程度の知見を有しているのでしょうか。そもそも、その解説は本当に弁護士が書いているのでしょうか。今は弁護士が広告業者を利用して、広告業者が手配したフリーライターの文章を法律事務所の集客に利用する時代です。
3.弁護士があてにならない実例
不当景品類及び不当表示防止法
(定義)
第二条
4 この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。
景品表示法は「取引に関する事項について行う広告その他の表示」を規制する法律です。
人材紹介(有料職業紹介)業者は、求職者と求人企業をマッチングすることで紹介手数料を得ていますが、紹介手数料を支払うのは求人企業であり求職者ではありません。
人材紹介業者は求職者からは紹介手数料を受け取らないのだから求職者との間で取引を行うものではない、人材紹介業者が求職者を誘引するための手段として行う広告には取引付随性がないので景品表示法は適用されない、そのように力強く言い切っている弁護士がいました。
しかし、令和4年に、実際とは大きく異なる就職率を表示することで求職者を集めていた人材紹介業者が、景品表示法違反による措置命令を受けました。
どのように取引付随性を認めたのか定かではありませんが、法務部員ならば、直感的に嘘をついてはならないとわかるでしょう。
不当景品類及び不当表示防止法
(目的)
第一条 この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。
直感というのは、虚偽の広告を信じて不適切な人材紹介業者に身を委ねれば、景品表示法の趣旨である一般消費者の利益の保護に反するという判断です。経験を積んで判断能力が研ぎ澄まされれば、意識して考えるまでもなく見た瞬間に無意識にあるべき方向性がわかるようになります。それを直感と言います。
法務部員ならば、どこの馬の骨かわからない弁護士に騙されずに、景品表示法の趣旨から判断できるようになる必要があります。
4.必ず原典にあたる
インターネット上で拾ってきた解説は、調査の手掛かりにはなります。しかし、信用には足りません。弁護士の解説に出てきた条文を、電子政府の総合窓口で確認する作業は必須です。
必ず原典にあたれ、必ず一次資料にあたれ、法務部員ならずとも口ずっぱく教えられる調査の出発点ですが、これを疎かにしている法務部員があまりにも多い。口ずっぱく教えるのは欠かさず実行する必要があるからです。だから私も、口ずっぱく、原典にあたれ、一次資料にあたれ、法令と官公庁の見解のみを信じろ、とお伝えします。これを怠れば、独善的な法務部員になってしまいます。