1.著作権法は何を保護するのか
著作権法
(目的)
第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
思想又は感情を創作的に表現したものを保護して文化の発展に寄与するのが著作権法です。創作的に表現、という部分が重要で、アイデアに著作権はないし、ありふれた表現にも著作権はないことを理解する必要があります。アイデアどまりのものや、ありふれた表現は、文化の発展に寄与しないからです。
2.著作権法の特徴
(著作者の権利)
第十七条 著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
2 著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。
著作権は著作者が有する様々な権利の集合体です。いかなる方式の履行も要せずに発生する点にも特徴があります。
(著作権の譲渡)
第六十一条 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
2 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
(翻訳権、翻案権等)
第二十七条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
第二十八条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
著作権の一部は特掲しなければ譲渡されないことになることにも注意が必要です。
3.プログラムの著作物
(定義)
第二条
十の二 プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。
実務では、プログラムの著作物が頻出します。プログラムというのは要するにソースコードのことだと理解すれば、感覚的には大外ししません。
ただ、著作権が生じるのは、創作的な表現についてのみです。プログラマーならば誰もが同じコードを書くという状況ならば、創作性は認められず、プログラムの著作物にはなりません。また、アルゴリズムはアイデアなので著作物にはなりません。
プログラムの著作権とは、ソースコードを複製したり翻案したりできる権利のことです。それがどれほどのお金を生み出しうるか想像できなければ、法務部員にはなれません。
4.職務著作
(職務上作成する著作物の著作者)
第十五条 …「法人等」…の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
2 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
法人の発意に基づく業務において作成された著作物については、プログラムは作っただけで、それ以外は法人名義で公表すれば、法人が著作者になります。
これはかなり実務を意識した条項に思われます。アイデアは保護しないという観点からは、表現を行った従業員に著作権が帰属することが本筋に思えますが、発意というのは要するに業務指示のことであり、会社が著作物を作れと指示したからには会社が著作権と著作者人格権を行使できなければ意味がないので、このような条項になったものと思われます。もっとも、法人が行使し得る著作者人格権の範囲については議論があります。
5.二次的著作物
(定義)
第二条
十一 二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。
(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
第二十八条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
二次的著作物は重要な概念です。二次的著作物の範囲は幅広く、プログラムに機能を追加すれば二次的著作物になります。
小説を漫画化すれば、漫画は二次的著作物になり、小説の著作者にも権利が生じます。漫画がさらにアニメになれば、アニメは漫画の二次的著作物であり、小説のいわば三次的著作物です。小説が実写化されればアニメの著作者の権利は及ぶでしょうか。
法的な整理は簡単なのですが、実務的な整理、権利関係の処理に非常に手間がかかる分野です。
6.法務部員が活躍しやすい
(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合
AI開発などを念頭にしていると思われますが、著作権法は文化の発展に寄与することを目的としているのだから、文化の発展を阻害しないならば著作物を利用して新しいビジネスを開拓して良いと言っています。
立法者がやたらと攻めていることが著作権法の特徴です。法務部員が活躍のお膳立てをしてもらえている分野です。