日ごろの仕事と証拠集め

1.事実を主張するには証拠が必要

遅刻が多い従業員Aに対して懲戒処分をすることとなり、懲戒処分通知書において次のような記載をするとします。

2024年12月における当社の営業日数は12月26日現在まで19日間であるが、Aはそのうちの2日を欠勤し、残る16日の全てにおいて遅刻をしている。しかも、当社の勤務開始時刻は9時0分であるにもかかわらず、Aの出勤時刻は、12月2日10時5分、3日9時32分、5日11時29分、9日9時49分、11日9時45分、16日11時23分、19日9時55分、23日10時0分、25日10時18分となっており、30分以上の遅刻が9日である。Aは、11月においても、営業日数20日中、欠勤1日、遅刻15日うち8日が30分以上の遅刻であり、10月においても、営業日数22日中、欠勤1日、遅刻19日のうち7日が30分以上の遅刻であった。当社は、毎週月曜日の朝礼において遅刻をしないように全従業員に対して注意喚起するとともに、10月7日には、上司であるBからAを面談室に呼び出しての口頭注意を行い、10月21日にも、再度BからAを面談室に呼び出しての口頭注意を行った。それでもAの遅刻が改まらなかったので、11月5日13時から、人事部長CとBが、面談室において、Aに対して懲戒処分の可能性を告知した上で事情の聴取を行ったが、Aからの弁明はなかった。さらに当社は、12月6日、Aに対して改善に向けた指導書を手交し、その中において医師による診断を受ける旨の助言を行った。にもかかわらず、12月26日に至るまで、Aの遅刻は改善されることなく、医師による診断を受けたという報告もない。

細かな数字が並んでいますが、懲戒処分の効力を争われた場合を考えると、そのすべてが証拠に裏付けられている必要があります。

2.日ごろの仕事をきちんとしていれば自然と証拠は揃う 

証拠集めは大変な作業であるように思われるかも知れませんが、日頃からきちんと体制を整備しておけば、苦労することは全くありません勤怠管理をきちんと行っていれば、毎日の出勤時刻は把握できます。むしろ、把握できていないとすれば労務管理上の問題があります。それを正すことも法務部員の仕事です。 

注意や指導を行うにも、他の従業員の面前で行うとパワハラにされてしまい、加害者であるはずの不良従業員が、パワハラの被害者に立場を転じて逆襲してくる時代です。法務部員がパワハラ研修を徹底していれば、上司は呼び出しての注意を行うようになり、そうなると、面談室の利用状況から、口頭注意の日時も把握できます。人事部長の面談ともなれば、スケジュールに記入されるので、やはり日時の捕捉は容易です。この際には、事前に法務部員も相談に乗って、録音していること、懲戒処分を検討していること、弁明があればここで伝えること、を告げた上で面談を多なうべきです。そうすれば、会話内容までも証拠が残りますし、弁明の機会を付与しているので、懲戒処分の有効性が手続的に補強されます。指導書は法務部員が起案するので、簡単に証拠が残せます。注意点としては、押印後にコピーを取った方が、実際に手交された内容を主張しやすくなります。 

法務部員のミッションは、法律を守ることではなく勤務先を守ることですが、勤務先を守るための手段として勤務先に法律を守らせる必要があります。法律の中でも企業にのみ適用される、いわゆる業法はなかなかよくできていて、法律を守っていると身の潔白を証明しやすい状況が自然と整います。そのため、法律を守るように社内を説得する際には、法律を守っておけばいざというときに有利な証拠を集めやすくなるから保険だと思ってくれ、という説明が可能です。いざというときのために証拠集めをしておこうとすると窮屈ですが、労働安全法やパワハラ防止法を守っていれば、証拠の大部分は自然と集まるので、法務部員がきちんと仕事をしていれば、いざというときの証拠集めが楽になります。