1.契約書を作成する理由
契約書を作成する理由はいろいろとあるのですが、その一つに税務上の証憑としての作成が挙げられます。契約書を通じてお金のやり取りが行われますが、証憑が必要となるのは主としてお金を払う場面です。このお金はこのために使いました、だから経費です、と説明するための必要となる証拠が証憑です。
2.売上と立替金
A社がC社からレンタルサーバーを借りてWEBサイトを開設することになりました。A社にはWEBサイトを更新できる人材がいないため、WEBサイト制作会社B社にWEBサイトの管理とレンタルサーバーの管理を委託することになりました。A社は、B社に、C社に対するサーバー代金の支払いもお願いすることにしました。その結果、A社は、B社に対して、WEBサイト管理に対する業務委託料に加えて、C社に支払うべきサーバー代も支払うことになります。
法務部員として経験を積むと、この支払いをB社の売上とするのか立替金とするのかに思い至れるようになります。
C社からB社が受け取る請求書の宛名がA社ならば、B社では立替金として処理して、A社に対してC社から受け取った請求書を渡して実費精算することになるでしょう。
C社ともB社から支払うと話をつけていて、C社から宛名をB社とする請求書が発行されている場合には、B社としては、自らの経費としてC社にサーバー代を支払い、A社に対してサーバー代を上乗せした業務委託料を請求することが通常でしょう。サーバー代はB社の売上になるということです。
立替金として処理すれば経理は簡便ですし、売上として処理すれば見かけ上の売上を増やせる反面、消費税の出入りを計算しなければならなくなります。メリットデメリットを踏まえて判断すれば良いのですが、B社宛の請求書をもらうことにしていた場合に、契約書上で立替金としてしまうと、A社はとても困ったことになります。A社が、B社から、C社が発行したB社宛の請求書を受け取っても、B社に向けた支払いがこの請求書に対応すると説明することが困難になってしまうからです。
3.企業は消費税を払うことに抵抗がない
法務部員は企業の一員なので、企業の金銭感覚を身につける必要があります。
一般市民の感覚では、10,000円だと思って買った商品が外税表記で、11,000円支払うことになった場合、1,000円損をした気分になります。
しかし、企業は消費税を全く気にせず、本体価格のみを気にしています。それは、消費税には仕入税額控除という仕組みがあるからです。
企業は売上の10%の消費税を納めなければいけないのですが、納税の際には、支払った消費税分の減額を受けることができます。これが仕入税額控除です。支払った消費税分の節税がなされるので、企業は、消費税は無料くらいの感覚で動いています。
この感覚を身につけておくと、契約書において本体価格を明らかにしたうえで別途消費税を支払うとすることの重要性がわかります。
4.インボイス制度も理解することが必要
私は、インボイス制度が始まった際に、研修講師をするために消費税について勉強しました。私の場合は外注先の立場からですが、法務部員には社内研修の講師の仕事もあります。付け焼刃で学んだことを偉そうに他人に教えることも法務部員のスキルです。
理由はどうあれ、私はインボイス制度を学びましたので、私が企業に対して業務委託料を請求する際には、企業が仕入税額控除を受けられるように、適格事業者登録をしたうえで、消費税はいくらだと明確に示した請求書を作成しています。また、毎月定額の顧問料をいただく際には、いちいち請求書を発行せずとも仕入税額控除してもらえるように、適格事業者番号を契約書に明記しています。
税務処理も学ぶと、ワンランク上の法務部員になれます。