1.相対的な概念
広く一般的に適用されるのが一般法、特定の対象や行為についてのみ適用されるのが特別法です。特別法が適用される場合、一般法も同時に適用されることになります。その場合、特別法の定めが優先されます。
一般法と特別法は相対的な概念です。例えば、民法は一般法、商法は商事に関する特別法ですが、商法は、会社法に対しては一般法になると言われています。
労働基準法も、民法に対する特別法であると同時に、公務員法に対しては一般法となります。なお、労働基準法と公務員法の関係は複雑で、国家公務員か地方公務員か、特別職か一般職か、現業か非現業か、によって、労働基準法の適用の有無や範囲が異なります。
重要なことは、複数の法律が適用されうる場合に、どちらの法律が優先するかを判断できることです。この判断は難しくなく、適用範囲が狭い方の法律が適用されます。一般法と特別法の区別を記憶するのは悪手で、複数の法律が適用されうる場合、相対的に適用される範囲が狭い方が特別法だと理解すれば間違いありません。
2.特別法には強行規定が多い
特別法だから強行規定だということはないのですが、特別法には強行規定が多い傾向にあります。これは当然のことで、特別法は、狭い適用対象に対して特別な扱いをすることを目的としており、目的の多くは弱者保護であるため、公の秩序となりやすいのです。
借地借家法
第三章 借家
第一節 建物賃貸借契約の更新等
(建物賃貸借契約の更新等)
第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
2 (略)
3 (略)
(強行規定)
第三十条 この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
消費者が取引相手となる企業に勤務する法務部員にとって、消費者契約法は必修科目です。
消費者契約法
(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)
第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項
(略)
3 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものを除く。)又は消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものを除く。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する消費者契約の条項であって、当該条項において事業者、その代表者又はその使用する者の重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないものは、無効とする。
これはとても分かりやすく、借家人の保護のために、契約を更新しない場合には1年前から半年前までの間の予告が必要で、契約によってもこれを破ることはできません。
インターネットサービスの利用規約などで、企業の債務不履行責任を全部免責する条項が散見されますが、これは消費者契約法第8条第1項第1号違反となり無効です。
さらに、同項第2号により故意重過失の場合には一部免責も無効になります。
これらはわかりやすいのですが、問題は同条第3項です。同条第1項を前提に、次の規程があったとします。
法律上許される限り、当社は金5万円を超えて損害賠償の責を負いません。
軽過失ならば最大5万円、故意重過失ならば通常通りの損害賠償責任ということになりそうです。ところが、令和5年6月1日に施行された消費者契約法改正によって第8条第3項が追加され、「法律上許される限り」という文言が禁じられました。
当社は金5万円を超えて損害賠償の責を負いません。ただし当社に故意または重過失がある場合にはこの限りではありません。
法改正施行後はこのように書き換える必要が生じました。
3.勤務先に適用される業法を押さえる
特定の業種にのみ適用される法律を業法と言います。宅地建物取引業法、電気通信事業法、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(派遣業法)などのことです。
業法は特定の業種にのみ適用される特別法であり、一般法に優先されます。さらに、強行規定である場合が多いです。
法務部員は、勤務先の業種に適用される業法を理解しておかなければ仕事ができません。
法学部や司法試験では特別法を扱うことは少ないのですが、法務部員の実務では特別法こそが主戦場になります。