1.法律用語はちょっとおかしい
法律初学者にとって、善意と悪意という言葉は鬼門です。法律用語において、善意とは知らないこと、悪意とは知っていること、ですが、これらは一般的な意味とはかけ離れています。
2.悪意と図利加害目的
順序が逆転しますが、悪意から先に考えます。悪意を理解するためには、図利加害目的を理解することが近道です。図利加害目的とは、図利と加害のどちらかがあるということです。図利という言葉も耳慣れないのですが、自分や第三者の利益を図ることです。加害はわかりやすく相手に損害を与えることです。一般的な意味での悪意に相当する法律用語が、図利加害目的です。
3.善意と確信犯
善意を理解するためには、確信犯という言葉が役立ちます。確信犯という言葉は誤用されることが多いのですが、悪いことだとわかって行う犯罪というのは誤用で、正しくは、信念に基づいた犯罪です。正しい意味での確信犯は、一般的な言葉の意味としての善意に分類されるものです。しかし、この確信犯を法律用語で表現すると、図利加害目的がない悪意ということになります。
4.法務部員ならではの言葉遣い
法務部員は、不祥事を起こした役員や従業員に対する懲戒処分通知書を起案(法律の世界では書面を作成することを起案するといいます)することがあります。その際に、会社を犠牲にして自らの利益を求めた懲戒処分対象の悪性を表現する言葉は、悪意ではなく、図利加害目的です。
また、法務部員は、勤務先が取引先等に迷惑をかけてしまった際の謝罪文も代筆します。その際に、良かれと思ってやった、というときには、善意、ではなく、どのような目的で、という記載をすべきことになります。このような言葉の使い分けができないと、法的に不要な混乱を招く上に、能力不足の烙印を押されることになります。
法務部員が作成する書面に限らないのですが、表記ゆれを生じさせないことも重要です。さらに、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)」というように、その場限りの言葉の定義も行います。
法務部員が作成するドキュメントは、会社の外に出ていくことが多々あります。その際に、言葉選びなどから能力不足を見抜かれてしまうと、自分だけでなく、自分以外の従業員もレベルが低い会社なのではないかと疑われてしまいます。法務部員は内勤のイメージが強いですが、実際には、仕事内容が社外に露出する機会が多いので、責任は重大です。