4.契約書の管理

1.法務部以外が所轄の場合も

無事に締結された契約書の管理をどこが所轄するかは企業によって様々です。法務部である場合が多数派と思われますが、総務部や、文書管理専門の部署を設置している企業もあります。

中小企業では、契約書を一元管理していない場合も多々あります。各契約の担当者がなんとなくそのまま手元においていて、契約書の確認が必要になった際に紛失が発覚したり、担当者の退職時に持ち出されてしまったり、ということもあります。

2.契約書は権利証ではない

ずさんな管理が許されてしまうのは、契約書は権利証ではないからです。契約書は、契約が締結されたという事実を証明するための証拠に過ぎず、紛失しても契約の内容は有効性にはなんら影響がありません。

3.それでも契約書の管理が重要である理由

契約書の確認が必要になるのは、契約において不明点や争いが生じたときです。

契約書では、支払はどのタイミングで行うかが定められていますし、どのようなトラブルが起こった場合にはどのような手続きを取ると定められている場合もあります。

一番みっともないのは、次のような場合です。自社は高額な請負契約の発注者であり、相手方である受注者から中間金の支払いを請求された。担当者の退職に伴い契約書は紛失してしまったが、退職者のメール履歴を漁ったところ、契約交渉に際して提示したドラフトが出てきて、そこには中間金の支払い条項はなかった。そこで、請求を拒んだら、相手方から訴訟提起された。訴訟では、相手方から契約書原本が証拠として提出され、そこでは中間金の支払いが合意されていた。この場合、中間金の支払いに加えて、遅延損害金と、通常は中間金の1割程度が認められる弁護士報酬相当額の損害賠償を支払うことになり、相手方からは契約を解除されることになり、手元には何も残らないでしょう。さらに、自社が依頼した弁護士の着手金も支払う必要があります。その弁護士からの信用も失います。

当たり前のことですが、最終的にどのような内容で合意したのかを確認するためには、契約書原本をきちんと保管しておくことが必要です。

4.法務部が管理すべき

企業毎に判断するべきことではありますが、契約書は法務部が管理するべきです。

法務部は契約トラブルの相談先となりますが、相談を受ける際には契約書の確認が必要となります。ならば法務部が保管することが合理的です。

また、契約書の文言に不明点があった際にも、作成に関与している法務部員ならば詳細を把握しているはずなので、やはり自ら管理することが合理的です。

さらに、法務部員の教育という観点からも、自分たちが作成に関与している契約書が実際にどのように使われるのかを知ることは、成長につながります

契約書は経理が確認することもありますし、監査の際にも確認を受けます。そのため法務部以外が管理することを否定するわけではありません。気が利いた企業は、ハードコピーも電子データ化して、原本は文書管理部が保管しながらも、法務部員が原本の写しにアクセスできる環境を整えています。

お伝えしたいのは、法務部が管理することにも合理性があり、契約書の管理も法務部員の仕事であるということです。

法務部は契約書作成・添削の専門部隊で、契約書の管理は法務部がなすべき仕事ではないからと拒否する者もいるようですが、それは、法務部員としてのスキルが低いという自白です。自分がなぜ契約書を作成・添削するのかをきちんと考えて仕事に取り組んでいれば、後から契約書を確認する場面こそが法務部員の出番だと理解できるはずです。