1. 求められる法務人材像についての議論状況と年収相場

1.課題はスタッフ不足

2024年12月21日付日本経済新聞は、国内の主要企業の約8割で法務人材が不足していると報じています。同新聞は、2023年12月にも、企業の法務担当者が、部門の課題として「スタッフ不足・採用難」を報じていました。法務部員の人材不足は慢性化しています。 

2.求められるのは経営の資質を備えた人材 

経済産業省が設置した「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」(以下「在り方研究会」といいます)2018年4月報告書は、日本企業がさらされている大きな競争環境の変化として、①ビジネスのグローバル化、②イノベーションの加速、③コンプライアンス強化の要請の高まり、を挙げています。これらの変化が、法務部員の需要を加速させていると言えるでしょう。 

在り方研究会は2019年11月19日に「~令和時代に必要な法務機能・法務人材とは~ 」という副題をつけた報告書を公開しています。この報告書では、企業の法務機能を、ガーディアン機能、ナビゲーション機能、クリエーション機能に分類したうえで、一般論として、日本企業の法務機能は、特にクリエーションの能力を高めていく必要があるとしています。 

在り方研究会は、報告書を作成するまでの議論の中で、「日本の法務は、『ゲートキーパー』、いわばポリス、ジャッジであり、ビジネス部門からすると乗り越えなければならないハードルになっている。価値を創出するものと認識されていない。」という問題点を指摘しています。そして、求める人材像に関して「法令全般の基礎知識に加えて、ビジネスの理解や分析力、交渉力・説得力、IT リテラシーなどのスキルや、最適解を選ぶこと、現実的解決策を見出すことなどの姿勢・マインドセット、企業内プロフェッショナルとして組織と専門性の二重コミットメントの重要性等が説かれたところであり、これらの資質を備えた人材について、経営と法務の専門性を兼ね備えた者として、いわば『経営法務人材』と呼ぶべき」としています。在り方研究会は、単に法律ができるゲートキーパーではなく、経営の資質を備えた、経営法務人材が求められていると結論付けています。 

3.年収相場 

現実の転職市場においても経営の資質を備えた人材が求められています。C&Rリーガル・エージェンシー社によると、法務部員の年収相場は、キャリア別に次のようになっています。

若手法務スタッフ(20歳代): 350~500万円 

中堅スタッフ(経験5~10年以上): 450~800万円 

課長クラス(マネジメント): 750~1,200万円 

部長クラス: 800~1,500万円 

引用)法務求人.jp, 「法務部員の給与の実態は?キャリアプランと共に実態を紹介

課長クラス以上の管理職になると給与相場が跳ね上がりますが、その分、転職では、法務部での実務経験にプラスして、マネジメント経験が重視されるようになります。マネジメント経験は経営の資質に含まれるので、在り方研究会だけでなく、現実の転職市場においても、経営の資質を備えた法務部員は高い評価を得られることがわかります。 

社会が複雑化する中で、社会の変化に対応し、新しいビジネスを創り出していくために、これからの法務部員には、ガーディアン機能に加えて、ナビゲーション機能、クリエーション機能が求められています。 これらの能力を発揮するためには、法的素養があるだけでは足りず、経営の資質も求められます。
なお、法務部員が経営の資質を身につけるだけでなく、経営の資質を備えた人材が法的素養を身につけることでも、評価される人材となることが可能です。